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【コラム】特別受益・寄与分って?民法改正で相続のルールが変わっています!

【記事公開日】令和2年12月21日

【最終更新日】-

【目次】


はじめに


特別受益(民法第903条)


持ち戻し免除の意思表示の推定(民法第903条第4項)


寄与分(民法第904条の2)


特別の寄与・特別寄与料(民法第1050条)


実際のところ使える制度なの?


まとめ

はじめに

2019年の民法改正により、「特別受益」や「寄与分」といった相続に関するルールが一部追加・変更されました。「特別受益」「寄与分」がわからない方も多いかと思いますので、制度の基本から解説していきたいと思います。


特別受益(民法第903条)

まずは特別受益に関する条文を掲載します。

後ほど解説しますので、読み飛ばしていただいても構いません。

民法


(特別受益者の相続分)

第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。

 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

そもそも特別受益の制度とは、相続人が被相続人から生前贈与(または遺言による遺贈)を受けていた場合に、贈与された財産を相続財産に加えて計算する(よく「持ち戻す」と表現される)ことを言います。もし生前に贈与された財産が相続財産としてカウントされないとすると、法定相続分が公平ではなくなってしまいますよね。


持ち戻し免除の意思表示の推定(民法第903条第4項)

2019年の民法改正により、この特別受益の例外規定として、居住用不動産についての持ち戻し免除の意思表示の推定追加されました。

  • 婚姻期間が20年以上の夫婦が配偶者に

  • 居住用建物またはその敷地を

  • 贈与または遺贈したとき

に限り贈与した分は相続財産として加算しない(持ち戻さない)という意思表示を被相続人がしたと推定される、という内容になります。これにより、残された配偶者は自宅を確実に受け継ぎながら、残りの遺産2分の1が(持ち戻されることなく)法定相続分となるので、安心して贈与・遺贈を受けることができます。なお、持ち戻し免除の意思表示の「推定」ですから、被相続人が持ち戻しを免除しない意思表示をしたことを証明する資料があれば、当然持ち戻しはされない結果となります。


相続人間の関係が良くない場合などは、法定相続分を基準として遺産分割を行うことが普通ですから、実質的に配偶者の法定相続分を増やす本規定は配偶者をより強く保護するための法改正と言えます。


寄与分(民法第904条の2)

寄与分についての条文は以下になります。

民法

(寄与分)

第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。

 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

 第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。

特別受益とは逆の概念として、寄与分という言葉があります。

寄与分の制度とは、相続人が被相続人の財産の維持又は増加をさせる行為をしたとき、その分を相続財産から控除して計算することを言います。具体的には、

  • 被相続人の事業に関する労務の提供

  • 被相続人の療養看護

  • 財産の給付

といった行為が条文中に挙げられています。


寄与分の価額の計算ルールに条文上の規定はなく、相続人間で協議がまとまらない場合、家庭裁判所に請求して寄与分を定めてもらうことになります。「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮」することとされているので、寄与分の主張者はこれらの要素を疎明する資料を用意しておくことが重要です。


特別の寄与・特別寄与料(民法第1050条)

民法

第千五十条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。


(第2項以下省略)

2019年の民法改正により相続人以外の親族にも上の寄与分とは若干異なる「特別の寄与」が認められました。

  • 無償で療養看護その他の労務の提供

を行うことにより被相続人の財産の維持又は増加させた相続人以外の親族は、相続開始後に相続人に対し「特別寄与料」の請求をすることができます。「寄与分」と同様に特別寄与料の算定ルールの定めはなく、「特別寄与者の寄与に応じた額の金銭」となっています。相続人との協議が揃わないときは寄与分と同様に家庭裁判所に判断を求めることになります。


実際のところ使える制度なの?

特別受益については、条件と効果が条文中ではっきりしているので、贈与などの事実を証明する資料があれば十分に実用的なものであるといえます。


寄与分については、実は認められるケースはあまり多くありません。そもそも親子兄弟間には扶養義務がありますから、それを超えて「財産の維持増加につながる特別の寄与」と主張するには相応の事情が必要になることが推測されます。

具体的には、有料の介護サービスなどを利用せず、同居しながら1年以上継続して毎日の介護を行い、さらに報酬を受け取らない、といった要素が揃っている必要があると言われています。

これらを証明するために資料をまとめたり、弁護士への依頼が必要となる可能性もありますから、主張する側の心理的なハードルの高さもあり、気軽に使える制度だとは言い難いのが現状です。


まとめ

今回は「特別受益」「寄与分」「特別の寄与」について解説しました。

法定相続分にとらわれず、円満に遺産分割協議ができる家庭ではあまり関係がない規定かもしれませんが、いわゆる「争族」は突然起こることもありますので、覚えておいて損はないと思います。


【参考リンク】


民法 | e-Gov法令検索

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

【記事を書いた人】司法書士 岩田慎也

1991年、岐阜市生まれ。県立岐阜高校、名古屋大学経済学部を卒業。22歳で司法書士試験に合格。

愛知県の司法書士事務所に約3年間勤め、毎日お客様からの相続・遺言相談に対応。

2020年、岐阜市花園町で司法書士あんしん相続を開業。

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