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【資料】定款を見直しましょう!

最終更新: 4月7日


パンフレット「定款を見直しましょう!」

日本司法書士会連合会

商業登記・企業法務対策部

定款を見直しましょう
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 我々司法書士が株式会社の商業登記手続きについて依頼を受ける場合、顧客に対して何をお願いすることになるでしょうか。様々な個別事情のヒアリングも必要ですが、間違いなく、まず、最初に「定款」と「株主名簿」を拝見させてくださいとお願いすることになると思います(登記事項証明は司法書士側で取得する場合もあると思います)。定款を確認する理由は述べるまでもないと思いますが、きちんと定款を管理している会社もある一方で、一部の顧客の反応としては、「定款ってあったっけ?」とか、「この定款は古いもので現行の定款は知りません」とか、「定款はないので法務局で取得できますか?」とか「昭和に創業していますが設立以来定款は変更していません」等々、中小企業においては定款の重要性について、いまだに認知されていない状況もあるようです。


 ご案内のとおり定款は、会社の組織・運営・管理を定めた根本的規則であり、度重なる法改正により、定款自治の範囲も拡大しており、近時では様々な取り組みも検討されています。定款を現行法に基づいてきちんと整備することで、無用な紛争を防止することや、改正法に基づいて定款に定めることができるようになった事項を活用し、経営課題に対処することも考えられます。


 我々司法書士は、日常的に株式会社に関与していますが、他にも様々な専門家(弁護士、公認会計士、税理士等々)が関与しています。しかし、定款の整備状況への関与という観点では、その頻度と必要性において、我々司法書士が一番関与しているのではないでしょうか。定款の重要性を認識していない会社に「定款」を整備していただくことは、中小企業を支援する法務の専門家としての司法書士の重要な役割だと考えています。


 こうした支援にご活用いただきたく、日本司法書士会連合会は、令和元年(2019年)6月21日付日司連発第317号『「株主名簿を整備しましょう」「定款を見直しましょう」のチラシの送付について(お知らせ)』におきまして、対外向けの広報チラシと「株主名簿」の整備にあたってご利用いただけるひな形を案内させていただきました。「定款を整備しましょう」のチラシでは、会社法になじみのない方を対象に、法改正に対応した定款となっているかという基本的な事項のチェックを行うものとなっています。皆様の顧客である中小企業の支援にお役立ていただきたく、簡単なご説明も加え、あらためてご案内させていただく次第です。

そもそも会社に『定款』はありますか?


(1) 会社の義務

❶ 「定款」の備え置き

 株式会社は、「定款」をその本店及び支店に備え置かなければなりません(会社法第31条第1項)。


❷ 閲覧等の請求に応ずる義務

 株主及び債権者は、会社の営業時間内は、いつでも、「定款」の

①閲覧

②謄本又は抄本の交付

③「定款」が電磁的記録をもって作成されているときは、記録された事項を表示したものの閲覧又は謄写の請求

をすることができます(会社法第31条第2項)。

「株主名簿」と異なり、上記の請求についてはこれを拒むことができません。


(2) 義務に違反した場合 

(1)に記載された義務に違反した場合、(代表)取締役は100万円以下の過料に処せられる旨が会社法に規定されています(会社法第976条第4項、第8項)。こうした過料は、会社に対してではなく、(代表)取締役個人に対して科され、登記されている(代表)取締役の住所宛に通知がなされます。


(3) 実務上の問題点

 株式会社の定款には、絶対的記載事項のほかにも株主総会・取締役会の招集方法、決議要件、議長の定め、役員の任期等重要な事項が規定されています。現行の定款が確認できなければ、株主総会・取締役会が適法に開催・運営できていることが確認できないこととなり、これを無視して株主総会・取締役会を行ってしまうと、手続きに瑕疵が生じてしまう恐れがあります。現存する定款が無い場合の対処方法としては、会社法第319条の規定に基づき株主全員の同意を得て新しい定款を承認する方法を採用することになるかと思います。株主全員の同意を得られない場合は、株主総会の決議により新しい定款を承認する方法が考えられますが、前述のとおり株主総会の運営に疑義が残りますので、株主総会決議取消訴訟の可能性なども考慮しつつ、慎重な対応が必要と考えられます。

※ここでの『定款』は、形式的意義の定款を指します。


現行法に則った用語が使用されていますか?


(1) 旧商法時代の用語

 旧商法時代に定款で使用されていた用語には、右のような用語があります。株式会社の定款に右のような用語が使用されている場合は、現行法に基づいた定款になっていない可能性がありますので、全体的に見直しをした方が良いと考えられます。


額面株式、一単元の株式数、発行する株式の総数、資本の額、発行する各種株式の数、端株、端株主、株主名簿の閉鎖、名義書換代理人、登録質権者、自己株式の処分、新株の発行、決算期、営業年度、営業、営業譲渡、利益配当金、利益処分、存立時期、根拠法令が商法となっているもの等々


(2) 定款変更決議の要否

 平成18年5月1日会社法改正以後、必ずしも定款変更決議を行って現行法に基づいた用語による定款を作成する必要はありませんが、株主及び債権者からの閲覧・謄写請求に対する一定の備えが必要となります。また、法令上は旧法に基づいた用語を使用したままでも問題ない場合であっても、現行法に基づいた正しい用語、内容の定款とすることが望ましいということは言うまでもありません。旧法下に基づく会計処理方法が記載されている場合や旧法下においてのみ認められている制度が記載されている場合には、定款記載事項の内容と法令の要件とどちらも遵守する必要があるのかなど、会社運営に疑義が生じる恐れがあります。


(3) 閲覧等の請求をした者に対し開示しなければならない事項

 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」という。)では、会社法施行後に株式会社がその株主及び債権者による定款の閲覧、謄写請求(会社法第31条第2項各号)に応じる場合には、当該請求をした者に対し、定款に記載又は記録がないものであっても、整備法の規定により定款に定めがあるものとみなされる事項を示さなければならないとされています(整備法第77条)。

 実務的には、日常業務として取締役会の決議により、又は、株主の理解を得るよう他の変更事項と一緒に定款変更決議を経るか、あるいは報告事項として報告する等して、整備法のみなし規定に沿って書面としての定款全体を修正したものを備え置くか、定款全体を修正しない場合は、整備法のみなし規定により定款に定めがあるものとみなされる事項を別紙として用意し、現行定款とともに備え置くか等が考えられます。別紙としては、右のような文書が想定されます。


別紙

会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下,整備法)の規定により定款に定めがあるものとみなされる事項現定款には記載されておりませんが,整備法により定款に記載がないものであっても定款に定めがあるものとみなされる事項は,下記のとおりです。

1.監査役は会計に関するものに限り監査を行う( 整備法第53条)。

2.当会社は取締役会を置く(整備法第76条第2  項)。

3.当会社は監査役を置く(整備法第76条第2項)。

4.当会社は,当会社の株式(自己株式の処分によ る株式を含む)および新株予約権を引き受ける 者の募集をする場合において,その募集事項,株主に当該株式または新株予約権の割り当てを受ける権利を与える旨,および,その払込の期 日の決定は取締役会の決議により定める(整備法第76条第3項)。

5.当会社は株式にかかる株券を発行する(整備法 第76条4項)。

6.当会社は株主名簿管理人を置く(整備法第80  条第1項)。

以上


有限会社の定款をそのままにしていませんか?


(1) 旧有限会社法に基づく定款

 会社法施行と同時に有限会社法が廃止され(整備法第1条第3号)有限会社制度は、株式会社制度に統合されています。また、旧有限会社法で設立運用されてきた有限会社は、整備法の経過規定に基づいて会社法上の株式会社として存続しており(整備法第2条第1項)、旧有限会社法時代の用語を用いた定款については、それに対応するみなし規定が置かれています(整備法第2条第2項)。なお、定款変更の要否については、チェックポイント2(2)と同様の取扱いとなります。


(2) 閲覧等の請求をした者に対し開示しなければならない事項

 整備法では、会社法施行後に特例有限会社がその株主及び債権者による定款の閲覧、謄写請求(会社法第31条第2項各号)に応じる場合には、当該請求をした者に対し、定款に記載又は記録がないものであっても、整備法の規定により定款に定めがあるものとみなされる事項を示さなければならないとされています(整備法第6条)。実務的には、日常業務として取締役の決定により、又は、株主の理解を得るよう他の変更事項と一緒に定款変更決議を経るか、あるいは報告事項として報告する等して、整備法のみなし規定に沿って書面としての定款全体を修正したものを備え置くか、定款全体を修正しない場合は、整備法のみなし規定により定款に定めがあるものとみなされる事項を別紙として用意し、現行定款とともに備え置くか等が考えられます。別紙としては、次のような文書が想定されます。


別紙

会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下、「整備法」という)の規定により定款に定めがある又はないものとみなされる事項


整備法により定款に記載がないものであっても定款に定めがあるものとみなされる事項、定款に記載があっても定めがないものとみなされる事項は、下記のとおりです。


1.当会社の定款に記載又は記録がないものとみなされている事項 

(1)資本の総額(整備法第5条第1項) 

(2)出資1口の金額(整備法第5条第1項) 

(3)社員の氏名・住所(整備法第5条第1項) 

(4)各社員の出資口数(整備法第5条第1項)

2.当会社の定款に記載又は記録があるものとみなされている事項全部の株式の内容として当該株式を譲渡により取得することについて会社の承認を要する旨(株式譲渡制限規定)及び株主が当該株式を譲渡により取得する場合においては会社が会社法第136条又は第137条1項の承認をしたものとみなす旨の定め(整備法第9第1項)

以上

※他にも整備法第5条第2項・第3項、第4項、第10条、第24条によりみなされている事項があれば、 その内容を示す必要があります。


定款と履歴事項証明書の内容が合致していますか?


(1) 定款と履歴事項証明書の内容の不一致

 定款変更手続きだけを実施し、その変更内容を登記していない場合や、登記手続きだけを実施し、その変更内容を記載又は記録した書面としての定款を変更していない場合があります。商号、目的、本店所在地、公告方法、発行可能株式総数、株式の譲渡制限に関する規定、機関設計、役員の責任免除に関する規定、監査役の権限等々ありとあらゆる登記事項について、登記記録と定款が合致しているか確認する必要があります。もし、変更事項が反映されていない古い定款を開示してしまうと、虚偽の情報を開示していることとなりますので、提出先によっては大問題となる可能性があるためです。また、定款変更手続きだけを実施して登記していない場合には、登記すべき事項について、第三者に対抗することができませんし(会社法第908条第1項)、申請の時期によっては過料処分の問題が生じます。


(2) 登記記録の文言と定款の文言とが完全一致しない場合

 登記記録の文言と定款の文言は、完全一致していることが望ましいと考えられますが、定款の文言が登記記録の文言の実質を備えているときは、必ずしもその変更登記を申請する必要はないと考えられています(職権登記と定款記載事項との関係について(矢部博志「会社法施行後における商業登記実務の諸問題」登記研究702号69頁))。


役員の任期は何年になっていますか?


(1) 役員任期の再検討

 平成18年5月1日会社法改正により、公開会社でない株式会社においては、定款によって、取締役又は監査役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができるようになりました。所有と経営とが一致している株式会社の場合は、任期を伸長し改選手続きに係るコストを削減するということが考えられます。一方この場合のデメリットとしては、役員の見直しの機会が減少することです。特に、解任となった場合に、その解任について正当な理由がない場合には、解任によって生じた損害(例えば、任期中に得られたであろう報酬総額)の損害を請求される可能性もありますので(会社法第339条第2項)、顧客にその旨の案内が必要と思われます。


(2) 名前だけの役員の整理

 平成18年5月1日会社法改正により、株式会社では様々な機関構成を任意に採用することが可能になりました。旧商法下では、取締役会と監査役は必ず置くことが求められていましたが、現行法下では、取締役1名のみの会社も認められています。会社の経営にかかわっていない名目上の役員がいないか、顧客に確認のうえ、そのような役員がいる場合には、機関設計の見直しを提案した方が良いと考えられます。


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